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謎が多すぎる童謡<かごめかごめ> 「かごめ=妊婦」「ツルとカメ=明智光秀」「後ろの正面=秀吉」説も!?

日本史あやしい話


「かごめかごめ」と言えば、誰もが知るわらべ歌である。鬼を取り囲んで回りながら歌う遊び歌なのだが、歌詞は意味が不明。むしろ何かを暗示しているかのような謎めいた言葉が並んでいることに気がつくのだ。いったい、何を言おうとしていたのだろうか?


 

■千葉県の野田から広まった「かごめかごめ」

 

「かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる

夜明けの晩に ツルとカメがすべった 後ろの正面だあれ?」

 

 いうまでもなく、日本中に広く知れ渡ったわらべ歌である。目隠しをした鬼を真ん中に、周りを子供達が輪になって歌いながら回り、歌い終わった時に、鬼の後ろにいる子が誰かを当てるという子供の遊びである。

 

 地方によって微妙に歌詞が異なるが、昭和初期に、千葉県野田市に伝わる歌を元に記録されたもので、それが全国へと広まっていったのだとか。そのため、東武野田線の清水公園駅に、写真にあるような「かごめ唄の碑」が設置されているようだ。

 

 それにしてもこの歌、よく見ると、なんとも不思議。実に謎めいた文面が並んでいるのだ。

 

■「かごめ」は「囲め」か? 妊婦(籠女)か?

 

 まずもって、冒頭の「かごめかごめ」からして、何を意味するのか明確ではない。一説によれば、籠の目、つまり竹で編まれたカゴの網目を表していると言われることもあるが、唐突に籠の目を登場させ、さらに二重に重ねる理由がわからない。

 

 あるいはこれを、「囲め囲め」と呼びかけ合う掛け声とみなしたり、「屈め屈め」と鬼に命じる言葉だとみなされることもあるが、いずれも決定打に乏しい。

 

 変わったところでは、籠を抱き込んでいる女性、つまり妊婦を表した「籠女」とみなしたり、「神見女」こと巫女のことだとする向きもあるなど諸説紛々。

 

■「出やる」とは何か? 「夜明けの晩」とはいつなのか?

 

 次いで、「籠の中の鳥はいついつ出やる」というのも謎めいている。これを籠の中の「鳥居」と解釈して神社とみなす説や、単純に鬼を籠の中に閉じ込められた鳥と見なされることもあるが、これまた明確ではない。

 

「いついつ出やる」をいつになったら「出てくるのか」「出会うのか」「現れるのか」とみなすのか、意見が別れるところ。「夜明けの晩」に至っては理解不能で、夕暮れ時なのか、夜中なのか、明け方なのか、判断できそうもない。

 

■「ツルとカメがすべった」は明智光秀という説も!?

 

 さらに「ツルとカメがすべった」に至っては、これを敦賀(鶴)と亀岡(亀)を統(す)べていた明智光秀に見立てたり、家康の側近であった天海の名まで持ち出す御仁までいるなど、謎が謎を読んで、もはや収拾がつかないという状況なのだ。

 

 そして最後の「後ろの正面だあれ」が最大の難問というべきだろうか。これを単に真後ろと解せれば良いのだけれど、とびっきり想像力を発揮して、大仏殿を正面とみなし、その後ろに葬られた豊臣秀吉の名まで持ち出されることもある。

 

 そればかりか、明智光秀の出身地である岐阜県可児市を正面とみなして、日光の方を振り返ると、「後ろの正面」は、ちょうどその肖像画を所蔵する大阪府岸和田市の本徳寺に当るのだとの説まで飛び出してくるから驚くほかない。

 

 ここまで諸説が紛々飛び交うとなれば、もはやどれが正しいのやら、判断を下すのは難しい。「とかく謎めく歌である」との断を下したところで、話をそっと終えるのが良さそうだ。

 

 

かごめ唄の碑(千葉県野田市)

 

 

 

 

 

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藤井勝彦ふじい かつひこ

1955年大阪生まれ。歴史紀行作家・写真家。『日本神話の迷宮』『日本神話の謎を歩く』(天夢人)、『邪馬台国』『三国志合戰事典』『図解三国志』『図解ダーティヒロイン』(新紀元社)、『神々が宿る絶景100』(宝島社)、『写真で見る三国志』『世界遺産 富士山を行く!』『世界の国ぐに ビジュアル事典』(メイツ出版)、『中国の世界遺産』(JTBパブリッシング)など、日本および中国の古代史関連等の書籍を多数出版している。

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