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「貨幣の統一」を試みた田沼意次の先見性

蔦重をめぐる人物とキーワード⑦


2月16日(日)放送の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第7回「好機到来『籬(まがき)の花』」では、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称・蔦重/横浜流星)が地本問屋の仲間入りを果たすべく、吉原を奔走する様子が描かれた。蔦重の作り出した『吉原細見(よしわらさいけん)』はこれまでにない新しいもので、地本問屋の主人たちを驚かせたのだった。


■地本問屋を驚かせた蔦重版『吉原細見』

初代・歌川広重によって描かれた『東都名所駿河町之図』(国立国会図書館蔵)。「丸に井桁三」の暖簾印を掲げた店が越後屋で、江戸を代表する両替商だった。両替商は金、銀、銭の交換だけでなく、預金や貸付、送金など、今日の銀行と同じような役割を担い、巨万の富を得たという。

 偽板作りの罪で鱗形屋孫兵衛(うろこがたやまごべえ/片岡愛之助)が厳しい取り調べを受けるなか、蔦重は鱗形屋の代わりに版元として認めてもらおうと、地本問屋の会合に乗り込んだ。鶴屋喜右衛門(つるやきえもん/風間俊介)は『吉原細見』を従来の倍を売ることを条件に、蔦重の申し出を受けた。

 

 蔦重はそば屋の主人・半次郎(六平直政)や次郎兵衛(中村蒼)らの協力をもとに、『吉原細見』の改良点を探る。その結果、従来のものより薄くして、大見世だけでなく河岸の安見世までを含んで掲載することを思いつく。さらに、半値で売るという突拍子もない策に次郎兵衛らはたじろいだ。

 

 製作が進むなか、地本問屋の西村屋与八(にしむらやよはち/西村まさ彦)が吉原の顔役たちに妨害を仕掛けたことを知った蔦重は憤慨し、支援に及び腰となる彼らに対し、吉原を江戸市中に売り出すべく、独自の版元を作る重要性を必死に説く。

 

 その心意気に感化された吉原の主人たちのなかには、表立って蔦重に協力する者も現れた。そのおかげで、花の井(小芝風花)が瀬川の名跡を継ぐという情報をいち早く入手し、蔦重は新たな『吉原細見』に盛り込むことができた。

 

 こうして、蔦重の吉原細見『籬の花』が出来上がった。地本問屋の主人たちはその出来栄えに度肝を抜かれ、我先にと蔦重の『吉原細見』を買い求めたのだった。

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小野 雅彦おの まさひこ

秋田県出身。戦国時代や幕末など、日本史にまつわる記事を中心に雑誌やムックなどで執筆。近著に『「最弱」徳川家臣団の天下取り』(エムディエヌコーポレーション/矢部健太郎監修/2023)、執筆協力『歴史人物名鑑 徳川家康と最強の家臣団』(東京ニュース通信社/2022)などがある。

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