吉原の魅力を記した『吉原細見』の歴史
蔦重をめぐる人物とキーワード③
1月19日(日)放送の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第3回「千客万来『一目千本』」では、吉原に客を呼び寄せるべく、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称・蔦重/横浜流星)が奮闘する様子が描かれた。蔦重は入銀という形で『一目千本(ひとめせんぼん)』を制作するなか、本作りの魅力を知っていくのだった。
■蔦重の製作した本で吉原に客が押し寄せる

1779(安永8)年に発行された蔦屋重三郎が制作した『吉原さいけん』(国立国会図書館蔵)。右ページに描かれているのが吉原大門で、左ページには吉原のメインストリートである仲之町通りに面した引手茶屋が描き込まれている。
蔦重(つたじゅう)が製作に関わり、平賀源内(ひらがげんない/安田顕)が序文を執筆した吉原細見『嗚呼御江戸』はよく売れたが、吉原の閑散ぶりに変わりはなかった。それどころか、黙って本作りに携わったと、父親代わりの駿河屋市右衛門(高橋克実)に激怒され、殴り飛ばされてしまう。
次の手として、蔦重は入銀本(にゅうぎんぼん)を思いつく。入銀本とは、出資金を募って作る本のことで、蔦重は女郎たちの競争心を煽ることで大金を手に入れ、女郎の姿絵を描く本の企画を進めた。
自分たちはビタ一文出さずに吉原の宣伝になる、と顔役たちは出版に賛同するが、一人、市右衛門だけは怒り心頭で、家から蔦重を追い出すのだった。
それにもめげず、蔦重は計画を実行に移す。選びに選んだ末、絵師の北尾重政(きたおしげまさ/橋本淳)に挿絵を依頼。二人は女郎を花に見立てることとし、寝る間も惜しんで製本に勤しんだ。
こうして入銀本『一目千本』が出来上がった。半月後、『一目千本』は蔦重の想像以上の反響を呼び、大勢の客が吉原に足を運んだ。そんななか、市右衛門も吉原を思う蔦重の心意気に心を動かされ、戻ってくることを許したのだった。
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