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多くの日本人がわかっていない「韓国の行動原理」 なぜ「反日」「親日」が変わるのか? キーワードは「民族主義」

歴史でひもとく国際情勢


「民族主義とは何か」と聞かれて、すぐ説明することはできるだろうか? 現代日本に暮らしている多くの人にとっては、おそらく具体的にイメージしづらい言葉であろう。この「民族主義」のあり方は日韓の違いを反映するものであり、韓国の政治情勢を構成するひとつの重要な因子となっている。なぜ大統領ごとに「新日・反日」が変わるのか? 激動の韓国は今後どうなっていくのか? 「民族主義」をキーワードに考えていこう。


 

■日本では<右派=伝統を重んじる>が、韓国は逆

             

 民族主義の形は国によって千差万別ですが、一般的には自民族の優越を主張し、マイノリティの排除と文化の純粋化・均一化を目指します。

 

 日本の政治の立場では通常、右派の方が日本人としての伝統を重んじ(=民族主義的で)、左派はその反対の傾向が強いです。米国はやや事情が異なりますが、フランスやドイツなど欧州は日本と似ています。

 

 さて、今回のテーマは韓国です。この点、韓国はかなり特殊な構造となっており、左派のほうが民族主義のカラーが強いことが特徴です。

 

 この民族主義は、日本においては「国粋主義」「愛国主義」と近しい言葉として扱われますが、韓国ではそれぞれ違うニュアンスを持ち、日本人の常識とは違うので誤解されやすいポイントでもあります。現在の韓国政治をめぐる混乱を理解するにあたって、民族主義をキーワードとして見ていきましょう。

 

■日本人が忘れがちな「韓国を理解するための3つのポイント」

 

 先に、韓国の政治を理解する上で重要なポイントを3つ挙げます。

 

 一つ目のポイントは、「民族が2つに分断されている」ことです。現代日本では韓国の文化があまりにも身近にあるため忘れがちですが、韓国は38度線で北朝鮮と区切られた「分断国家」です。平和条約が両国間で結ばれていないので、形式上は現在も交戦状態にあります。

 

 二つ目のポイントは、「韓国はアメリカの強い影響下にある」こと。1950年から始まった朝鮮戦争において、ソ連・中国に支援された北朝鮮と戦う際、韓国の一番の後ろ盾となっていたのが米国です。北朝鮮の軍事的脅威に対抗するため、現在も米軍が韓国国内に駐留しています。軍事面だけでなく、政治的にも経済的にもアメリカの影響は大きいものとなっています。

 

 三つ目のポイントは、「権威主義vs民主主義の構図」です。冷戦時代の韓国は、「北朝鮮の南下」という危機に対応する名目で軍部が大きな力をもちました。軍部は独裁・権威主義体制を築き、民主化運動を厳しく弾圧。民主活動家たちと民衆は、根強くデモなどの運動を繰り広げ、権威主義体制を打倒し、権力を奪い取った経験を持ちます。現代も保守層は権威主義の流れを、リベラル層は民主主義の流れを汲みます。

 

 この3つのポイントを踏まえて、韓国で<左派=民族主義>になった経緯をみていきましょう。

 

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尾登雄平おとうゆうへい

1984年福岡県生まれ。出版社にて勤務する傍ら、世界史の面白いネタを収集するブログ「歴ログ-世界史専門ブログ-」、YouTubeチャンネル「歴ログ-世界史専門チャンネル-」を運営。歴史ライターとしても活動し、ビジネス雑誌、企業オウンドメディア、会報誌などに寄稿する。著者に『あなたの教養レベルを劇的に上げる 驚きの世界史』(KADOKAWA)、『「働き方改革」の人類史』(イースト・プレス)がある。

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