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大国ロシアと戦うウクライナ独自の近代化改修が施された【MBT:T-64BMブラート】

戦うウクライナ軍の兵器~大国ロシアとの死闘で活躍するウクライナ軍の兵器を紹介~【第1回】


2022224日、プーチン大統領に率いられた大国ロシアは、隣国ウクライナへの武力侵攻を開始。これを受けて、ウクライナはゼレンスキー大統領の下に西側諸国の支援も受けつつ、祖国の防衛に奮戦。その戦いを支える、ウクライナ軍の各種兵器の横顔を逐次紹介して行く。第1回はT-64BMブラートMBTである。


 

独立記念日パレードの予行演習に参加中のウクライナ軍T-64BMブラート。車体の各部に白いアクセント・ラインを入れるのは、旧ソ連式の装甲戦闘車両に対するハレの日の「お化粧」である。

 旧ソ連は戦車の開発に力を入れていた。そのような状況下、T-55の後継となるMBT(主力戦車)として、先進技術を盛り込んだT-64の開発を1958年に開始。そして1966年に制式採用されている。

 

 125mm滑腔砲を搭載し、備砲への自動装填(そうてん)装置と耐弾複合装甲を備えた本車は、当時としては画期的な存在であった。しかし、技術的な不調と高額であったこともあり、本車をベースにして、既存の技術(枯れた技術)を組み合わせてT-72が開発された。

 

 そのため当初は、T-64は失敗作であり、改良によって実用化されたのがT-72だと誤解されていた時期もあった。

 

 その後、不調は解消されてT-64は旧ソ連軍に配備されているが、その数はT-62T-72に比べて少なかった。

 

 このように開発された時期が古く、しかも旧ソ連時代は戦車の主要生産地であったウクライナでは、このT-64をベースにして独自の発展改良型を開発したが、その中でもT-64BMブラートは、優れたMBTとして仕上がっている。

 

 旧ソ連が開発したT-64Bに対して、ウクライナが独自の改修を施した準試作型のT-64Uを量産したものがT-64BMブラートで、侵攻勃発時のウクライナ軍の主力戦車であった。

 

 ウクライナ製125mm滑腔砲KBA-37.62 mm同軸機関銃KT-7.6212.7 mmKT-12.7砲塔銃を装備。砲発射型対戦車誘導ミサイル9M119レフレークスとその類似型の運用が可能。

 

 自動装填装置を備えるため、乗員は車長、砲手、操縦手の3名となっている。

 

 また、主機は850馬力の水平対向ピストン5気筒多燃料ディーゼル・エンジン5TDFMを搭載している。

 

 なお、防御用にウクライナ製爆発反応装甲のニージュが装着されている。

 

 今回のロシアによるウクライナ侵攻では、ウクライナ軍が運用するT-64BMブラートと、ロシア軍が保管兵器から復帰させたT-64シリーズが共に投入されたので、彼我が同系列の戦車を使用して戦う局面も生じた。そのため、双方で鹵獲(ろかく)車の運用もしばしば行われている。

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白石 光しらいし ひかる

1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。

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